深部体温についてご存じでしょうか。睡眠にものすごく重要な役割を果たす深部体温について解説します。
深部体温とはどこを指すの?
皆さんが普段使用する体温計は、腋に当てて測ったり、口に加えたり、耳たぶに当てて測るものから、おでこや手首にかざして測るものまで様々なタイプのものがあります。
このような体温計はすべて皮膚の体温を測るものです。
では、深部体温はどこの体温なのでしょうか。深部体温は、体の中心部を指します。脳から、心臓などの臓器を含めた体の中枢の体温を指します。
深部体温は皮膚体温と比べて体温が高いのが特徴です。その理由は、代謝により熱が生れることと、生れた熱が汗として熱が逃げずに蓄熱することによります。
深部体温はどのようにして計測するの?
深部体温の計測は直腸の温度を測ります。
直腸温を測る理由は、体内温度に近く、放熱がないことが挙げられます。
直腸温度の計測には肛門から10cmぐらいの位置に温度センサーを挿入して計測します。なかなか普段計測しない場所にはなるのですが、全身麻酔をかけた手術の時にも計測されたりする重要な場所でもあります。
深部体温は眠りとどうかかわっているの?
深部体温は個人差がありますが一日のうちに1℃前後変化しています。幼児ほど体温の変化が大きく、高齢者の方が変動が小さくなります。
この深部体温の変動が眠りに影響します。
起きているときは、食べ物を食べたり、動いたり、物事を考えたりする時に熱がうまれます。体が熱くなりすぎると汗をかいて体を冷やしますが、睡眠は汗をかいて体を冷やすのと同じような働きをします。
睡眠中は交感神経の働きが低下して末梢血管が拡張することで血流が増加します。それにより皮膚から熱を逃す放熱が行われます。特に睡眠の前半に多く汗をかいて、気化熱で皮膚を冷やすことで深部体温を冷やしているのです。
この体温の変動は、サーガディアンリズム(概日リズム)といって、約1日を周期としたリズムによるものです。このリズムは体内時計の働きにより制御されていて、夜になると眠くなる理由の一つは体内時計のリズムによる深部体温の低下によるものなのです。
赤ちゃんの子守を経験したことのある方なら分かるかもしれませんが、赤ちゃんが寝る時に手や足がポカポカと体が暖かくなってくるのも同じメカニズムで深部体温を冷やすためです。
起きてから11時間後ぐらいが深部体温が最も体温が高く、寝る2~4時間前まで高い体温を維持し、その後体温は下がります。この時に、皮膚から放熱が始まり徐々に深部の体温が下がっていきます。
「頭を冷やす」は理にかなった言葉
ミスを起こして動揺したり、混乱しているときに「頭を冷やしてこい」と言われたり、あるいは、喧嘩した時などに「頭を冷やす」という慣用句を使いますよね。
頭を使うと、エネルギーを消費して熱が生まれます。頭を使いすぎると集中力がなくなったり頭が痛くなるのは脳が悲鳴を上げている証拠。助けて!と言っているんですね。
なので、「頭を冷やす」というのは脳を休ませて脳の熱を逃がして冷静に考えるという科学的に理にかなった言葉なのです。
冷え性は眠りの妨げに
私は子供の頃から手足の血流が悪く、毎年しもやけになっていたほどの冷え性です。冬に布団の中が寒くて、温かくなるまでなかなか眠れないということもあります。
この冷え性は単純に体が寒くて眠れないという他に、放熱も影響しています。寒い時は血管が収縮して皮膚の体温が低いままの状態です。そのために放熱が起きずに、深部体温が下がりません。結果として眠りの質が悪くなってしまう、ということなのです。
冷え予防のためにお風呂に寝る直前に入るという方が、しっかり入浴するとかえって深部体温が上がってせっかく低くなってきた体温がまた上がってしまい眠気の発生が遅れてしまいます。こういう場合は、しっかり入浴するのではなく、体の表面だけを温めるようにすることを心掛けるのがおすすめです。
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