皆さんは、交代制勤務の経験はありますか?特に3交代制勤務はよくきついとか疲れる、と聞くのも事実ですよね。
交代制勤務ってきつい、大変とかよく聞くけど、それは寝る時間が一緒じゃないからでしょ?
では、寝る時間がずれるだけで体がなぜ疲れるかちゃんと説明できますか?
そ、、それは…
今回は、交代制勤務がなぜ疲れるかの仕組みについて説明していきます!
夜勤のある交代制勤務者は疾病のリスクも高まる
これまでの説明でも触れましたが、特に3交代制勤務についている人というのは疾病のリスクが高まるという報告があります。
厚生労働省が2002年に調査した内容[n=283]によると、夜勤をし始めてから、病気の内容の割合は以下の通りでした。
- 胃潰瘍:51.0%
- 高血圧性疾患:22.6%
- 睡眠障害:18.8%
- 肝疾患:13.1%
- 糖尿病:6.9%
- 心身症:5.4%
- 心臓病:3.4%
- 喘息:2.7%
- 脳血管疾患:13.4%
- その他
その他にも精神病や肥満といった様々なリスクが高まると報告されています。
夜勤後の睡眠では、光が部屋に差し込んだり、生活上の騒音が加わってきます。そもそも眠りづらい状況に生理的環境加えて、眠りを阻害する環境要因が組み合わさった結果、不眠につながりやすくなります。
今は大丈夫でも、年を重ねるごとに免疫や体力は落ちていきますので、注意が必要です。
交代制勤務者が疲れるしくみ
交代制勤務者が病気になりやすく疲れる理由は、寝る時間が異なることが大いに関係しています。
この寝る時間が異なることが私たちの身体にどのような影響を及ぼすのでしょうか。
睡眠覚醒リズムと、体温リズムがずれが関連
交代制勤務によって体が疲れる根本の原因は、睡眠覚醒リズムと体温リズムがずれることです。
勤務時間が決まっていたり、規則正しい生活をしている人というのは、だいたい同じ時間に眠くなったり、同じ時間に起きますよね。
規則正しい生活を送っている人は、体内時計が整っており、睡眠覚醒リズムと体温リズムが1日の中で同じようなリズムを刻んでいます。
一方、長期の休みなどで夜更かしをしたりして、生活リズムが崩れ遅寝遅起きになってしまうと、睡眠覚醒リズムはずれてしまいます。比較的容易に睡眠覚醒リズムは変わりやすいですが、体温リズムは強固ですぐには変化しません。
以下のグラフは、睡眠覚醒リズム(上)と体温リズム(下)を表します。
上の表の覚醒度が低いほど眠い状態をさします。規則正しい生活を送っている人はこのようなグラフになります。
ここで睡眠覚醒リズムと体温リズムの表を重ね合わせてみます。体温が下がると同時に眠気が強くなることが分かります。
しかし、ここで、昼夜逆転のような生活をすると、睡眠覚醒リズムと体温リズムがどんどんずれていきます。(黄色の線)
体温リズムの働き
ここで一度体温リズムの役割について説明します。
※ここで説明する体温は私たちが使用する皮膚体温ではなく、体の深部(中心部)の体温です
体温は、1日の中約1℃ほどで同じ時刻に同じ体温になるようにリズムを刻んでみながら変動します。(→これが体温リズムです。)この働きにより、私たちが活発に活動したり、しっかり休息ができるように1日の中で体温を調整を行っています。
私たちの体温は、ちなみに、起きる2時間前ぐらいに最低体温となり、起きてから11時間後に最も体温が高くなります。体温が高いと眠気は抑制し、体温が低いと脳を休めようとするため眠気は強くなります。
睡眠覚醒リズムと体温リズムが別々だとなぜ悪いのか
夜寝て朝起きる人と、夜が明けてから寝る人の状態を説明していきます。
【夜に眠る場合の脳と睡眠の関係性】
夜寝ている間に体温が下がることで、脳を休めることができます。また、起きる約2時間前に体温が徐々に上がり始めるため、身体の調子を整え始める準備を開始していきます。
夜眠った時の状態を例えると、お店の閉店時間でどの従業員がいない状態から、開店のために従業員がやってきて、お店の鍵を開けて、徐々に開店準備を開始するようなイメージです。
【夜が明けてから寝る場合の脳と睡眠の関係性】
明け方に眠るような遅寝遅起きの場合は、体温が上がっているときに眠ります。つまり、脳は眠いのに体温は上昇し、身体は動けるような態勢を作っています。
体温が上がっていると脳は休もうとしても休めることができません。そのため、睡眠は浅くなり、深い眠りが短くなります。結果として夜寝る時と比べて睡眠時間も短くなりやすく、体の疲れが取れにくいというわけです。
夜が明けてからの睡眠をイメージに例えると、お店を開けているのに天気が悪く、店内はガラガラ。だけど、お客さんがいつ来るかわからないから、閉めるわけにもいかず、仕込みなどの準備をしながらお店を開けておくようなイメージです。
生体リズムと環境サイクルのズレにより、身体が「時差ボケ」状態に
本来、私たちは明るいと覚醒し、暗くなると眠くなるという生理的な働きが備わっています。脳は夜寝て朝起きるという生体リズムとに対して、夜勤というのは、夜間に働いて、夜が明けてから寝るというサイクルになります。
しかし夜勤中は、明るい照明を浴びるため眠気が抑制されることで、睡眠覚醒リズムがずれていきます。さらに夜勤後は朝日の明るい光を浴びながら帰宅するため、一向に暗くならず脳はいつ寝ればいいのか判断できなくなってしまいます。また、夜勤後は夜間の睡眠と比べて、明るい状態で寝ることや、生活音といった騒音により睡眠が短くなる傾向があります。
上のグラフはドイツと日本での交代制勤務者の吸就床時間別の睡眠時間の長さを表したものを改変したグラフになります。
夜間の睡眠よりも、体温の高い10時から20時までの時間の平均睡眠時間は平均で5時間以下となっています。また、特に夕方近くは体温が高くなるため、仮眠であっても長くは眠れていないことがこの結果から分かります。
こういった生体リズムと環境サイクルのずれといった外的要因が原因で、時差ボケと同じような状態になります。飛行機を使わずに、一時的にどこでもドアでフランスやアメリカに移動をし続けているようなイメージが分かりやすいと思います。
時差ボケは、眠気や不眠、頭痛や吐き気、疲労感といった症状が見受けられますが、交代制勤務でも同様の症状がみられるようになります。
時差ボケは、現地での生活が長いと次第に体が同調し、現地の生活リズムに合わせて体も整っていきます。ですが、交代制勤務というのは昼寝る日もあれば、夜寝る日もあるといった不規則な生活を送ります。そのため、身体がいつ寝ればいいのか判断できずに、ホルモン分泌が崩れていきます。結果として、長期間の交代制勤務によりそれが不眠症や内臓疾患、精神病といった病気につながるリスクが高まってしまうのです。
夜勤対応のない、早朝・深夜対応の交代制勤務者でも同じ
夜勤対応がなくても、寝る時間が不規則な人でも上記の説明と同様に、生体リズムと環境サイクルがずれやすくなります。
例えば、早朝から深夜まで営業するファミレスやカフェでは、朝番と夜番では寝る時間が異なるという場合が多く見受けられます。
夜勤ほどまではいきませんが、睡眠サイクルが一定していないことにより体のバランスが異なりやすくなります。
そのため、勤務中でも強い眠気や夜眠れない、といった不眠にもつながる恐れもあります。
昼間働いているサラリーマンでも月曜日に同じ状態になる
休日が週末2日間という方の中には、金曜・土曜は夜遅くまで起きて、土日は朝遅くまで寝ているという生活スタイルの方は多いと思います。夜更かしはしなくても、土日に寝だめを行うという方も同様です。
週末に起床時間や1日の総睡眠時間が変化することで睡眠サイクルが崩れ、日曜の夜になってもなかなか眠くならなかったり、眠りが浅くなったりして月曜日は寝不足状態で仕事を行うことになります。そのため月曜がとにかく眠い、疲れるといったことが発生してしまいます。
ちなみに私も以前は月曜日は悲惨な状態でした。慢性睡眠不足により、土日は遅くに起きたり、昼寝を長くとる生活を続けていました。その結果月曜日は、通勤時の電車内で座席に座った瞬間に眠りに落ちるというほどの睡眠不足で通勤し、午前中仕事にならないくらい強い睡魔と戦いっていました。昼休みは多くを昼寝に当てて、やっと午後から本調子になるというスタイルを送っていました。今となっては、規則正しい生活リズムを送ることの大切さもそうですが、規則正しい生活が送れる環境にいることは、とてもありがたいことだと感じています。
交代制勤務の方のための日常生活の送り方
交代制勤務についている以上、仕事を辞めるわけには行けません。
どのような生活を送ればいいのかについては、以下にまとめているので合わせてごらんください。夜勤明けてからの帰宅時や家での過ごし方についても説明しています。
まとめ
寝る時間がバラバラだとなぜいけないのか分かったかな?
体温のリズムや覚醒リズムがずれることがこんなにも体に負担がかかってるんだね!しかも交代制勤務はそれが日常的に起きてるんだね。
そうなの。ちなみに夜勤を含めた交代制勤務者は2012年時には人口の20%()にも上るとも言われているの。(※[久保達彦:我が国の深夜交替制勤務労働者数の推計,2014])これにより私たちの暮らしが便利になった一方、体調を崩す人も増えている人も事実。このような社会を改善していくことが求められるわ
うぅ、とても難しい問題だね。。
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